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いち東大生の書評ブログ

最近やっと熱心に本を読むようになった、とある文系東大生による気楽な書評ブログです。

宗教の基礎知識を学ぶ―『世界がわかる宗教社会学入門』

世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)

世界がわかる宗教社会学入門 (ちくま文庫)

今回紹介するのは、橋爪大三郎『世界がわかる宗教社会学入門』筑摩書房(2006年)です。
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日常生活ではあまり意識しないけれど、本当は世界の人々の生活の根底を支えている宗教について、大学教授である著者の講義をもとに編集された一冊。


主にユダヤ教キリスト教イスラム教、仏教儒教について、その成り立ちや教義の特徴、社会における発展の様相が平易にまとめられています。


「最近イスラム教のことがニュースによく出てくるけど、実はよく分かっていない」「仏教って本当はどんな宗教なんだろう」などという疑問を持っている方々におすすめです。
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「宗教とはなにか? などと、ふだんあらたまって考える機会はあまりない。(中略)人間であることと宗教とはどんな関係があるのかについて、いっしょに考えてみたい。」


講義をもとにした本ということもあり、書き出しは語りかけるような調子で始まります。変に気張らず、かといって大衆におもねることもない文体は気品が感じられ、また非常に読みやすいです。


「日本人はにとって、宗教は知的な活動でないから、(中略)外国で、人々が熱心に宗教を信じていることが、理解できなくなる。そこで、宗教とはなんだろう?という疑問をもつようになる。」


ここに述べられているのが筆者の問題意識です。「知的な活動」とありますが、これより前に、筆者は「知性」についての論考を加えています。要旨は次のとおりです。


この世界が、ある偉大な知性の手で設計されたと考える。それなら、世界が価値にあふれ、意味に満たされているのは当然である。
それを設計した知性のことを神と呼ぶことにする。


これがキリスト教イスラム教といった一神教が生まれた原理的な説明です。この具体例から、知性とは、不条理に満ちた世界から、意味や価値を持った世界を取り出す、文明の原動力となる試みであった、と筆者は述べています。それがつまり宗教です。


一方、日本では、自然は知性を超えた、人間の頭で考えられないものだとする側面が最近まで残っていたことを筆者は指摘します。これは、先述の宗教の試みと相反する考え方です。


だからこそ、筆者は上記のような問題意識を持ち、「それぞれの宗教について、具体的な知識をもとう。それぞれの宗教を信じる人ぶとに対して、敬意をもとう。そのうえで、宗教を知性と結びつけて、理解しよう。」と読者(とりわけ日本人)に呼びかけるのです。

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これ以降、各宗教についての基礎知識がまとめられたパートに移ります。各章の冒頭にキーワードが記されている上、本文でも重要語が太線で記されているので、ポイントをつかみやすいです。


イスラム教の章を例に取りましょう。キーワードは「ムハンマドウンマヒジュラ、ジハード、コーラン、スンナ」とあります。これらの言葉が、イスラム教を理解する時に重要になります。


もちろんそれだけではなく、他にも理解するべき重要な言葉はあります。例えば「メッカ」「アッラー」といった言葉は太字で示されています。それ以外にも興味深い記述はたくさんありますが、これは実際に読んで頂いた方が分かりやすいでしょう。


写真や地図などもふんだんに使われており、具体的にイメージしやすいのもgoodですね。
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「宗教なんて別に....」と思っている方も、読んでみるとその奥深い世界に興味をそそられるのではないかと思います。内容のレベルは高校の社会を少し深めたくらいなので、あまり苦労せずに読み進められます。